好奇心

今日は久々の土曜休みというのに年寄りの悲しさで早朝から目が覚め、何気なくテレビの電源を入れると「幸せのレシピ」という映画が流れていました。料理映画というジャンルには名作が数多く、この映画もまたそのひとつといえる名作です。ただし、実はこのジャンルのほとんどは主人公が創る料理のもつ豊かさ、変化、驚きなどが見る人の心を揺さぶり、マンネリした脚本、演技、音楽、撮影などの要素をカバーしているとも言えるかもしれません。その意味では手抜きの映画ではありますが、映画鑑賞は「感動した」方がお得ですので、あまり頭脳をつかって論理的な批評を試みるより、感情的になって笑ったり、涙をそっと流したりしましょう。

 

ところで皆さんはやはり料理映画ですが「バベットの晩餐会」は見られましたか?私の推薦するベスト映画のひとつです。この映画の紹介としては素晴らしいレビューを発見しましたので次に転記します。

 

この作品は、86年の米国アカデミー賞受賞作品『愛と哀しみの果て』の原作者として知られるデンマークの女流作家カレン・ブリクセン女史の同名小説を、同じくデンマーク出身のガブリエル・アクセル監督が自ら脚本を書き上げ映画化、それまで取り上げられることの少なかった『食』をテーマにした上質な作品に仕上げ、88年の米国アカデミー賞外国語映画賞を獲得しています。
映画は、北欧デンマークの海辺の寒村を舞台に、厳格な牧師だった父の遺志を継いで神に仕える道を選んだ老姉妹マチーネとフィリパの慎ましやかな日常から始まります。そして、二人のもとに身を寄せるフランス人の召使いバベットが数奇な運命の末にこの家に住み着くまでのエピソードが、映画の前半を通して淡々と語られていきます。その間、この映画の特徴とも言える僅かに青みを帯びたアンティークな映像からは、北欧の地に根差した敬虔なプロテスタントの人々の実直な暮らしぶりがリアルに伝わり、あたかも華美を嫌ったフェルメールの絵画を思わせる居心地のよさを感じさせます。映画は中盤、バベットのもとに届いた一通の手紙が発端となり意外な展開を見せ、この映画のクライマックスとも言うべき牧師の生誕100年を祝う晩餐会へと移っていきます。かつて、パリの最高級レストランで天才料理長として名を馳せたバベットが腕によりをかけて拵えた芸術作品ともいえるフランス料理によって、『最後の晩餐』を暗示させる12人の客人ひとりひとりが心豊かに満たされ、忘れかけていた牧師の大切な教えをその胸のうちに呼び覚まされるという大団円の描写は圧巻で、観る者すべてに満ち足りた幸福感をもたらします。

 

良いレビューですね。この映画の内容を簡潔に表現しています。しかし私がこの文章を無断で転記した理由は別にあります。実はこのレビュー以外のほとんどのレビューには、「パリ・コミューン」という単語が記されています。主人公が迫害され、フランスからこの小さな村に追放されたのがこの時期となります。映画内ではこの時代がどのような時代であったのか、また何故主人公は追放されたのかほどんど語られてはいません。私が感じますのは、ほとんどのレビューが「パリ・コミューン」という言葉を年号のように軽く取り扱っていますが、実は現代史にも重大な影響をいまだ与え続けている歴史上の泡のように消えた悲劇的な社会体制といえるかもしれません。世界にその栄華を誇ったナポレオン時代からフランス革命、その後の混乱期の一時期の「パリ・コミューン」ならびにその崩壊過程の一時代のフランスの歴史を学ばれてからこの映画を鑑賞しますと独特な色彩をはなつ映像の重厚さと歴史の重さが重なりより堪能できると思います。少しの=好奇心=があれば映画をもっとお得に鑑賞できる一例です

 

今日はこれから「ターミネーター4」か「スタートレック」を見に行く予定です。私は名作、大作よりこちらのほうが好きです。